茯苓(ブクリョウ)
茯苓(ブクリョウ)は生薬の名前です。確認した医療用添付文書では、日本薬局方ブクリョウは「漢方処方の調剤に用いる」とされ、むくみや消化器症状、動悸、不眠、精神不安などへの単独の効能は承認されていません。このページでは、規格上の正体、報告されている成分、伝統的な概念、処方ごとの承認効能を分けて書きます。
診断、用量、治療の案内ではありません。症状がある場合は医師・薬剤師に相談してください。
規格上の正体
確認した医療用添付文書(日本薬局方ブクリョウ、販売名ブクリョウダイコーM、2023年12月改訂第1版)では、本品1g中に日本薬局方ブクリョウ1gを含み、効能又は効果および用法及び用量はいずれも「漢方処方の調剤に用いる」です。生薬成分そのものは、承認された漢方処方の効能でも、単独の治療薬でもありません。
基原は、公益社団法人東京生薬協会「新常用和漢薬集」の第十八改正日本薬局方収載の説明に従うと、サルノコシカケ科マツホド Wolfiporia cocos Ryvarden et Gilbertson(Poria cocos Wolf)の菌核で、通例、外層をほとんど除いたものです。生薬ラテン名は PORIA、英名は Poria Sclerotium とされています。
報告されている成分
ここで挙げる成分は、治療効果を示すものではありません。KEGG DRUG(ブクリョウ、D06783)と東京生薬協会は、主な成分として四環性トリテルペン酸のパキム酸(pachymic acid)、エブリコ酸(eburicoic acid)と、多糖類のパキマン(pachyman)を挙げています。含有量は産地や調製で異なり、このページは特定製品の定量値を示しません。
伝統的な捉え方(承認効能ではない)
漢方の古典的な説明では、茯苓は水分の偏り(利水)、消化器の虚弱(健脾)、精神の落ち着き(安神)に関わる生薬として処方に組み込まれることがあります。これは伝統的な理論であり、日本で承認された効能ではありません。茯苓を含むことは、その処方がこれらすべてに使われることを意味しません。
配合処方の効能は処方ごとに違う
次の二つは、いずれも医療用漢方製剤で、日局ブクリョウを原料に含みますが、承認された効能又は効果は別の製品のものです。生薬ブクリョウ単体の効能として読み替えないでください。一般用医薬品は文言が異なることがあるため、手元の製品の添付文書を確認してください。
桂枝茯苓丸(医療用の一例)
ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)の添付文書(2023年12月改訂第1版)では、効能又は効果は次のとおりです。
体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症:子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え症、腹膜炎、打撲症、痔疾患、睾丸炎。
この文言は、上記製品の承認効能です。ブクリョウを含むことで、生薬ブクリョウに同じ効能があるわけではありません。
関連ページ: 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
茯苓飲(医療用の一例)
ツムラ茯苓飲エキス顆粒(医療用)の添付文書(2023年12月改訂第1版)では、効能又は効果は次のとおりです。
吐きけや胸やけがあり尿量が減少するものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、溜飲。
同添付文書の組成では、本品7.5g中に、日局ブクリョウ5.0g、日局ソウジュツ4.0g、日局チンピ3.0g、日局ニンジン3.0g、日局キジツ1.5g、日局ショウキョウ1.0gの混合生薬の乾燥エキス2.75gを含有する、とされています。これは製品の組成の記載であり、服用量の案内ではありません。桂枝茯苓丸とは適応の範囲が異なります。
他に茯苓を含む処方
次の処方もブクリョウを原料に含みますが、効能はそれぞれの製品添付文書で確認してください。このページは、これらに生薬ブクリョウの効能を読み替えません。
安全性の読み方
「作用の穏やかな生薬」という一般化は、確認した添付文書にはありません。注意は製品ごとに読みます。
上記の医療用桂枝茯苓丸では、証(体質・症状)を考慮して投与し、改善がなければ継続投与を避けること、他の漢方製剤との生薬の重複に注意することが重要な基本的注意です。副作用として、肝機能障害、黄疸、発疹、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等が記載されています(頻度不明を含む)。
上記の医療用茯苓飲でも、証を考慮すること、生薬の重複に注意すること、妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること、授乳は継続または中止を検討することが記載されています。副作用として発疹、蕁麻疹等が挙げられています。
生薬ブクリョウの確認した添付文書は調剤用であり、単独での長期使用や症状への自己投与を推奨していません。動悸に胸の痛みや失神を伴う場合、急なむくみや体重増加がある場合は、漢方薬の選択より先に医療機関へ相談してください。このページは緊急時の判断基準ではありません。
参照情報
- PMDA 日本薬局方ブクリョウ(ブクリョウダイコーM)添付文書、2023年12月改訂(第1版)
- PMDA ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)、2023年12月改訂(第1版)
- PMDA ツムラ茯苓飲エキス顆粒(医療用)、2023年12月改訂(第1版)
- 東京生薬協会 新常用和漢薬集 ブクリョウ
- KEGG DRUG D06783 ブクリョウ
(確認日: 2026-10-02)